アンダー・プレッシャー

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 ギリシャの彫刻のよう、と言っても過言ではない、日本人離れの顔の中心に一瞬眉が寄ったが、それは茜が気づく前に消えた。 「あ……、鳥海さん、まだいたんだ……」  我が社のイケメンズの一人、大林賢郭(おおばやし けんかく)。もう一人はもちろん、栄子お墨付きの上尾だ。 「静かだったから、誰もいないかと思ったよ。電気付けっ放しだと思って見に来たんだけど。一人で残業? お疲れさま」  親会社の実業団バスケチームで活躍している、スポーツマンらしい爽快な笑みがさっと顔に広がる。茜は言われて初めて、大林と二人きりという状況に気がつき、妙に落ち着きを失った。 「お疲れさまです。ええ、でもあとコピーして終わりです。ちょっとお腹が減って休憩してたんですけど。大林さんもまだ残っていたんですか?」 「あ、うん……。でも、終わったから、三田でも誘って飲みに行こうと思ったんだけど……」 「経理は皆さん、もうとっくに帰りましたよ」 「そうだよね」  すぐ隣まで来た大林は経理部の同期の名前を出し、まだ一つだけ机に残っていた北海道銘菓を指した。クッキーにホワイトチョコがサンドされた菓子だ。
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