アンダー・プレッシャー

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 茜の視線はそれを摘まみ上げた大林の手を追った。無骨で男らしさを感じる手だ。 「これ、うまいよね」 「あ、甘いものお好きでしたら、どうぞ。私、実はもう一つ食べたので」 「いいの? じゃあ遠慮なく」  白い歯を見せて大林は笑んだ。そして再び誰もいないフロアを見回して溜め息まじりに言う。 「ふん……しょうがないな。おれも大人しく帰るか。上は誰もいないから、戸締まりしておくよ。お菓子、ご馳走さま。鳥海さんからこれもらっただけでも下に来た介があった」 「そんな」  茜は照れを隠すようにわざと事務的な口調で言葉を継いだ。 「じゃあ、戸締まりお願いします。お疲れさまでした」  手をひらりと振り、そそくさと大林はフロアを出て行った。その張りのあるスーツの背中が完全に消えると、茜はほっと息をついた。
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