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雲一つない晴天から降り注ぐ陽光、わずかに熱気を帯びた風になびく碧い木の葉。ありきたりな町の中、異形の化け物が四体。
五月の初旬のことだった。都会というには少々田舎臭い、東京都李渦町。その中にある市民公園、李渦公園にて、事件は起きていた。
休日でも人通りはそこまで多くない李渦公園に、その日は何故だか烏合の衆があった。広場をぐるりと囲むように、老若男女様々な人間が集まっている。
中には大きなカメラや機器を担いだ者までおり、公園の中央を必死になって映そうと四苦八苦。隣では地元放送局のアナウンサーが声を張り上げているが、野次馬のざわめきや悲鳴に今にもかき消されそうだ。
彼らの視線をたどった先にあるのは、四体の化け物である。うち三体は黒い球状で、顔面には大きな一ツ目と二本の角。小さな翼で飛び回りながら、触手のような細い腕の先にある鋭い爪を振り回して群衆を威嚇している。その奥にも一体何かがいるようだが、人の群れで隠れて姿は見えない。
人々は好奇心に誘われて集まってはきたものの、未知の異形を前にその先へと踏み出そうとはしなかった。ただ二人の青年を除いて。
「はいはい、どいたどいた!」
よく通る声が群衆のざわめきをぴたりと止める。人ごみをかき分けて、高校生くらいの青年が二人、ずんずんと足を進めていく。一人は水色のジャージの上から青いマントを羽織った、風変わりな青年である。無言で彼についていくもう一人は、紫のパーカーに身を包んだ端正な顔の青年だ。
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