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只今の運転手は礼華だ。メンバー内で一番、っつーか、一般的に見てもめちゃくちゃ大人しくて穏やかで、気弱で内気なエレガント野郎。
最初に海老名まで運転した綺悧は「自動車学校以来初めて運転した」っつって涙目だった。ガッチガチでスピード出せねぇし、こっちが怖かったわ。でも、礼華はすんなり優雅に運転してるし、こいつがイラつくとか想像できねぇもんな。ちょうどこの区間で良かった。
さて、タバコ一服すっか。
ダッシュボードに置いておいた俺のアメスピメンソに手を伸ばした、と同時にエンジンが唸りを上げる。
「えっ」
反射的に運転席を振り向く。
ガチャガチャっとシフトレバーが素早く操作され、ありえない勢いで車線変更……だと!?
「おっ、ちょ、礼華!」
礼華はいつものような聖母の微笑みを浮かべたまま、ほぼ真横かってくらいの角度で追い越し車線に入る。後ろの車は激しくクラクションを鳴らしてるけど、礼華の笑みは崩れない。
「おいこら!」
俺の声にはおかまいなしに、今度は走行車線に滑り込み、また斜め前の追い越し車線に割り込む。
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