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ミュージシャンに限らず、タレントってのは人気が出れば出るほど、周りの印象がイメージを固めちまう。中途半端な位置にいるうちは、そのイメージを壊さないようにって足掻く羽目になることが多い。それを越えられるのは、もっと上に行った時だ。
でも、宵闇のプロデュースはそうじゃない。それぞれの持ち味をちょっと強調するだけだ。メンバーに与えるのはキーワードだけ。本来のそいつの特徴だ。
そのやり方なら、ファンはそのイメージを持つし、失敗して裏切ることはない。その為だと思ってた。
でも、メンバーの為でもあったんだ。何も作らずに、自分自身でいられるように。自由に生きられるように。
宵闇も聞こえたみてぇだ。ちらりとこちらを見て頷く。
「ああ、他にお前はいない」
「はい」
礼華の返事には力がこもってる。
「俺自身が、俺。……っていうことは、池田家の長男は……凌駕であり、礼華」
何の捻りもねぇ、そのまんまの事実だ。でも、そんなまっすぐな理屈はこいつの家じゃ通らない。池田家の長男は、「池田家の長男」っていうキャラクターでなきゃならなかった。
「だから、チャンスなんだ、今日は」
「チャンスか」
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