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 そう言って画面を覗き込み、画面の隅の視聴者数を指さす。 「少なくとも……この人数は、ここに映る俺でしかない俺を受け入れてくれてるんだって」  明確に、ここに数字として弾き出される人数は、嘘のない礼華を違和感なく受け止めている人数。多分、この配信をリアルタイムで見られないファンも多いんじゃねぇかな。だとしたら、この数字は確かに最低限だって言ってもいい。 「それくらいは、わかってもらえるかな」 「いいんじゃねぇの。突破口にゃぴったりサイズだ」  分厚い壁を、爆破して穴を開ける。向こうに突入するにゃ、入り口が必要だからな。  分厚い壁は、じいちゃんの長い人生で培った価値観。律子さんがそのじいちゃんの元で、きっちり長女として育てられて来た刷り込み。礼華もわかってる通り、30分でそんなもんが塗り替えられることはない。そんでも、こんな数の家族以外の人間が今の礼華を認めているってことを知ったら、少しは見方を変えられるかもしれない。  女みたいな男、なんて古くさい概念は捨てちまえ。  名前のない誰かみたいな誰かじゃなくて、自分の両足で地面に立ってる、礼華としての池田凌駕だってことを思い知ればいい。
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