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「ありがとう。……認められなくてもいい、って思ってた……」
礼華は背筋をすっと伸ばして、ステージとしてセッティングされた、まだ暗いスタジオを見渡す。
「今は、時間がかかっても認めさせたい。……羨ましかったんだ、綺悧も、夕も」
「えっ?」
「二人とも、家族が誇らしく思ってくれてるでしょ? ……俺は池田家の恥って扱い」
改めて聞くと、やっぱキツイわ、それ。色んな家庭があると思うけどさ、長く縁を切ることのできない仲なわけだ。そこで、あいつはダメだ、恥ずかしいヤツだって言われ続けるってのは……しんどい。
「でも、変えたい。俺を育てたことを自慢して欲しいんだ」
「祭壇作らせっか」
笑って言ってやると、礼華も笑う。
「祭壇は恥ずかしいけど」
「俺に失礼だ」
「あっ。……でもね、それくらいでもいいかな、祭壇でも」
やった方がいいぞ、池田家。何なら道場にでも作るといい。これから世界的アーティストになる男だ。今から自慢しといて損はねぇ。
「スタンバイだ」
不意に宵闇の凛とした声が響き渡った。視聴者が集まってるのを確認して、やや安堵していた空気が引き締まり、お喋りしてたやつは全員口を噤む。
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