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耳の中で、大音量で再生される。いつものライブ開始直前の、全員が叫ぶベルノワールコール。
わかってんじゃん、お前ら。そうだ、どんどん声を張り上げやがれ。
ここは、アリアなんかよりでっけぇ、インターネットってハコだぞ。ちょっとやそっとの声じゃ埋まらねぇぞ。
耳の中のコールは、どんどんボリュームを上げる。耳が痛てぇわ、お前ら。後でやり返してやる。待っとけよ。
頭ん中で喚き続けたコールの足並みが揃う。
「2分前！」
マジでベルノワールのライブはヤバいわ。毎回必ず、ここからニヤニヤしちまう。まだスティックも握ってねぇのにな。
「行くぞ」
宵闇の声で、安田くんがスタジオの灯りを一旦消す。目印は足元で光るサイリウム。それを頼りにそれぞれが定位置に着く。リハーサルとテスト配信で繰り返したから、大丈夫だ。
スツールに座って靴を履き替える。スネアの上に置いてたスティックを手に取る。真っ赤に焼いた鉄棒みてぇだわ。あちぃ。
「1分前！」
配置はわかってる。目ぇ瞑ってても叩けるよ。ペダルに足を置いて、位置の最終確認。さあ、スタートダッシュの体勢は整ったぜ。
全員が静止する。
「30秒前！」
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