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朱雨と礼華は、じっとカメラの方を見てる。多分、すげぇ悔しい顔してると思う。ここまで、この配信の準備に追われた一週間は、文化祭前夜みてぇでちょっと面白かったよ。でも、開演時間になっても、ここには俺らしかいない。眼前のその事実を受け入れるしかない。
画面を監視してる安田くんも、苦い顔だ。ローディーだって、ライブを作り上げる為に大事な一人だ。ローディーが裏で支えてくれるから、俺らは安心してステージに出られる。その信頼関係があるから、安田くんだってライブに向けて張り切ってたに違いない。だから、こんなイレギュラーな仕事……しかも、タダ働きを引受けてくれたんだろう。
床嶋もさ、ほんとならこんな企画なんかに参加する必要なかったんだよ。でも、自分からやりたいって言ってくれた。こいつがいなきゃ、しょぼい音しか配信出来なかった。こいつは、俺らがとにかく「ライブ」を届けたいってのを、ちゃんとわかってくれたんだ。その証拠に、モニターから返って来るのは絶妙にエフェクトがかけられた、かなりリアルなライブハウスの音。
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