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高速道路に連なって煌めいているテールランプ。やっぱ帰省シーズンだよなぁ。渋滞とまでは行かねぇけど、走行車線も追い越し車線も、さほど車間距離が取れてねぇから、追い越して行くわけにも行かねぇ。
「渋滞してねぇだけで御の字だな」
隣の運転席でハンドルを握ってる礼華にそう声をかけて、ドリンクホルダーのコーヒーを取る。
「そうだね……これなら走れる」
「ま、スピード出せねぇし追い越せねぇけど」
外を眺めても防音壁ばっかでつまんねぇな。後部座席は寝てんのかな。宵闇は特に喋らねぇし。朱雨は寝てるかもしれんな。ってことで、話し相手が隣にいない綺悧も静かだ。
俺らV系メタルバンド・ベルノワールは全員が名古屋出身だ。こないだ加入した俺まで名古屋出身だったのは、ほんの偶然なんだけど。
てことで、この年の瀬、俺のエスティマで帰省するにあたって相乗りを募集したら、全員参加になった。全員免許ありだから、運転手交代できるし、ガソリン代と高速代も割り勘出来るからな。
って、朱雨だけは何でか東京出発と同時にビール呑みやがったから運転手に出来ねぇ。後で絶対ボコる。
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