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1:運命の人
いつからこうなったのか、そのあたりの記憶は定かではないけれど、気づけばそういう体質になっていた。
異性からの好意を感じると、途端にその人のことが気持ち悪くなる。
自分自身がその人に対して好意を感じていた場合でも、相手からの好意を感じ取った瞬間に拒否反応を起こしてしまう。
好きだと思っていたのに、自分の気持ちがころっと変わる。
私は自分の中でこの現象を「病気」と呼んでいた。
好意を寄せていた相手から告白されて、本当ならここで気持ちが一気に盛り上がるところなのに、私は一気にトーンダウンしてしまう。
しかしながら、「冷めてしまいました」だなんてそんなこと、口が裂けても言えない。
私自身、好意のある素振りを見せていたし、きっとそういう私の反応を見て、告白してくれたのだ。
そう思えば、自分の無責任な態度にも非がある。
向こうが告白してくるまでに、自分の気持ちがライクなのかラブなのか、見極めることができなかった私自身が悪い。
そう思ってとりあえずは付き合うのだけれど、結局相手に対する私の感情がプラスの方向に動くこともなく、数か月ともたずに関係は終わる。
どんなにお酒が回っていても、どんなにいいムードでも、好きでもない男の顔が近くまで迫ってきたら、反射でその顔を押し返してしまうのだ。
そして、THE END.
「俺のこと、好きじゃないよな。」と見事に胸中を言い当てられて、振られるのがお決まりのパターン。
そういうことが何度も続いていくうちに、私にはきっと恋愛は向いていないのだと思うようになった。
自分で自分の気持ちが信じられない。
好きだったはずなのに、嫌悪感すら抱いてしまう。
随分とバカなことを言っているのは承知で、それでも結構深刻に悩んでいた私は、友人に相談してみたこともあった。
しかしながら友人から返ってきたのは、「それは本当の恋をしてないんだよ!」「本当に人のこと好きになったことある?」なんていう、今の私にはハードルの高すぎる答え。
“本当の恋”“本当に好きになる”なんて、そんな恋愛の奥深いところにまで思いを巡らせる余裕は、今の私には無い。
友人から散々恋愛論を聞かされた私の中にかろうじて残ったのは、“私の好きはラブじゃない”ということだった。
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