エンド日常

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壇蜜のたべたいのを読んだ。彼女が2015年時点で34くらいの年齢だと知り非常に驚いた。それ以上に読ませる文章を書く才能に恵まれていることに驚く。食べ物に関するエッセイは星の数だが、淡々とした文体でそれがいかに美味かったかとしみじみ思い返すこともせず完全に割り切った文で感情移入をさせずあくまで彼女個人の等身大の感想を目一杯ぶつけられる具合だ。 私の食べ物の思い出は、やはり玉ねぎだろうか。イヌ科には毒なので食べさせてはいけない悪魔の実だ。非常にこいつには私自身悩まされてきた。カレーにもピザにもたまに味噌汁にも、見渡せば囲まれている、とりあえずぶち込んでおけばOKな便利な食べ物。これが煮ても焼いても生でも食えない。食感だろうか、舌の上に乗っかった時点で鳥肌が立ち飲み込んで処理していた。給食ではまず玉ねぎを喉に押し込んで一面を更地にしてから牛乳を飲んで口の中に玉ねぎの風味が完全に無くなってから食べ始めていた。人は好きなものより嫌いなものの方が盛り上がるという。思うのだが、好きなものが多い人間より、嫌いなものが多い人間の方が人生を生きているんじゃないだろうか。好きなものへの労力より嫌いなものへ割く労力の方が何倍も強いイメージだ。玉ねぎの薄皮の一枚も見逃さないぞと目を皿にして必死に探している時、熱心に追い求めているのと同等だ。それだけ人は嫌いなものに情熱を注げれる。 嫌いなものが大人になるにつれて無くなるのが、寂しさというより虚しさが少し残る。いずれ玉ねぎを生で齧っても平気になるんだろうか。その時が待ち遠しく、一生来て欲しくなく思ったりして。
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