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「本当にこっちであってんのかよ!?」
薄暗くなってきた林道でミーナの声が響く。ケイトとミーナの二人はエルフの城から南方向へ伸びる道を歩き、西の塔へ通じる道まで来ると進路を西へ変えた。そこまでの道のりは順調で、南の森に住むエルフは領外との交流も多いのか、すれ違えば気さくに話しかけられることも多かった。途中に整えられた宿場町や市場があり、ヒト族が所々にそういった拠点になるものを設計していたという歴史も耳にした。
ケイトは南に進むほど開けた考えや、おおらかな性格のエルフが増えるような気がしていてエルフ領にも地域性があることを実感する。さらに南に進んで、交易の盛んな所も見たいという誘惑もあるが、今は西に行くことを優先した。
西への道を歩み始めると、白や黒の石を積んだ荷馬車をよく見かけた。馬車と言っても荷物を引いているのは馬のような生き物で、よく見ると2本の角が生えている。エルフ領の人々はバイコーナと呼び、生活の中に溶け込んでいるようだった。バイコーナが荷を引く以前は獣族や力のある奴隷が加護を使い引いていた歴史もあるようだが、2000年という歴史の中でその意識は薄れていた。そして、大きい道では荷物を輸送する姿を多く見かけた。ただ、人を運ぶ手段が極端に少ないのは風の加護を持つ者が多いからだろう。軽装であれば風の加護を使い、軽やかに目的地までたどり着くことができるからだ。
西へ伸びる道を順調に進んでいた二人はレストランを併設した宿で、川の氾濫で道が塞がれているという噂を耳にした。翌日、実際に歩みを進めると制服を着たエルフが道の真ん中に立ち迂回路の案内をしている。多くのエルフは積荷を持っていて、一週間程立往生する可能性を伝えられると慣れた様子で近くの宿場町へ引き返して行った。
ミーナは道の先にあるであろう川に文句を言いながら、一週間も立往生するなら半日で山林を抜けるとケイトに話した。ケイトも制服のエルフから、迂回路と言っても明るい山林で道幅は狭いだけである程度整備されていると聞いたので、地図を確かめて脇道に逸れることを決めたのだった。
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