結婚と純愛

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 え? 結婚? 残念でしたこう見えてあたし既婚なのよねアハハ。あらプロポーズじゃないの? なあんだ期待しちゃったわあ。  あらごめんごめん、真面目な話なのね? そう、悩んでるのねあなた。理想の結婚ねえ、うん、あるわよ。うーんあたしじゃないのよね、あたしはほら、くっついたり離れたり、ね。こんな浮き草稼業してるんだからわかるでしょ、まあ人生楽しくやってますけどね。じゃ、あたしが知ってる昔むかしの不思議な純愛物語でも、教えてあげましょうかねえ……。  あたしには何人もきょうだいがいたんだけど、中でもいちばん好きだったのが一番うえの姉、幸子。さち姉ちゃんって呼んでたわ。とってもやさしくて、そんでもっておしとやかな美人でね、そう、昔ッからガサツで鼻ペチャおてんばだったあたしとはまるで月とスッポンよねアハハ。7つ上だったさち姉ちゃんは、かずちゃんかずちゃんって、あ、あたしの本名和子っていうのね、とってもかわいがってくれたのよあたしのこと。  あたしが子どもだったころ、日本はアメリカと戦争をしていました。  あなたみたいな若い子には想像もつかないことでしょうよ、なあんにもなかったあの時代のことなんて。どころか、空から毎日のように爆弾がふってくるんだからね、それが日常なんだから。  でねある日、あたし見ちゃったの。さち姉ちゃんが大きな木の陰で、男の人に寄りそってるところ。その時のさち姉ちゃんは、頬がぽっと赤らんで伏目がちで、いつにも増してきれいに見えたわ。恋する女はうつくしいっていうでしょう、あれ本当よ。  あとから聞いたんだけどその人は、17歳だったさち姉ちゃんとそう変わらない19歳の青年だった。でもいまの19歳とくらべちゃダメ、当時はね、すでにお国をしょって立つ立派な大人の男だったのよそんな年齢でも。今の子たちはみいんな子どもみたいだものねえ、のんきに遊んで暮らせるいい時代になったもんよねえ。まあなんにせよ若いってのはいいことよ。あなたもね、まだまだ若いわね。今のうちにたくさん楽しみなさいね。  あら、脱線しちゃったわね。そうそう、話しのつづきね。
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