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第40話「家族②」
「由一、改めて礼を言うよ。」
俺と浩太は同じ部屋で脱獄について話していた。部屋数がそれほど多くないので俺たち2人は相部屋にされているのだろう。
「礼はいらない。お前の靴墨がなければできなかった脱獄計画だし、そもそもお前からの誘いがなかったら脱獄しようなんて発想にならなかったかもしれない。」
「でも、脱獄の殆どは計画を立てたお前と飛行機を操縦してくれた茶土さんのお陰だ。お前ら2人にはこの世でもあの世でも頭が上がらないよ。」
「そうか。でも今は俺達への礼じゃなくて台湾にいるお前の家族の事を考えろ。余命にはまだ少しある筈だが、あくまで目安なんだろ?もしかしたら娘の余命はもうわずかしか残ってないかもしれない。」
「そうだな…。間に合うといいんだけど。」
「頑張れよ。お前を台湾に送り届けるように千鳥の部下に頼んでおいた。台湾に近づいたら俺達がこの船に乗るまでに乗っていた小型船にお前と部下で乗り込んで台湾に密入国を試みてくれるそうだ。部下は平社員だから、俺と千鳥で圧をかければ断れない。」
「何から何まで悪いな。部下の手まで煩わせてしまう。」
「部下については気にするな。そいつは組織を潰す計画のことを知らない。俺と千鳥の計画においては邪魔者なんだ。」
「そっちも大変だな。4日で組織を出し抜く計画を立てなきゃいけないんだろ?」
「そうだ。まだ現実的な計画が思いつかない。せっかく脱獄計画が成功に終わったってのに、今度は別の計画に行き詰まるとはな…。」
「…なぁ、由一。」
浩太がこの1ヶ月で1番真面目な顔をして俺に語りかける。
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