第1話「大事な用事」

1/3
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/142ページ

第1話「大事な用事」

2031年11月17日 東京某所 プルルルルル… 携帯電話の鳴る音がする。 ガチャ 「…取引場所の連絡か?」 数秒沈黙した後、俺は電話口に尋ねた。 「そうだ。来年の1月4日はどうだ?」 「遠いな。1ヶ月以上待たなきゃいけないのか?」 「あぁ。お前との取引を円滑に進めるために工夫しなくちゃならないし、証拠品は色んなところに隠してある。集めるのにも時間が要る。」 「わかった。それで場所はどこなんだ?」 「取引当日の朝9時に伝える。お前のいる支部から数時間で行ける場所だから安心しろ。時間についても当日だ。」 「わかった。ひとまず俺は1月4日の朝9時に支部にいればいいんだな?」 「そういうこと。じゃあ良いお年を。」 その言葉を最後に電話が切れた。 「計画通り。」 俺は再度携帯を開き、さっきとは別の番号に電話をかけた。コールがはじまるとすぐに相手が出た。 「もしもし?支部長?予定期間を少し過ぎちまうが、証拠品を取り戻せそうだ。取引は1月4日。早くとも昼頃にはなりそうだ。 何?その間にサツにタレ込まれたらどうすんだって?大丈夫。ちゃんと相手の弱みを握ってある。お互いに弱みとなる情報を返しあって、向こうは更に金も手に入る。大きな額のな。裏切る理由はないよ。じゃ、そゆことで。」 切った。こちらの会話はすぐに終わった。 「さてと…今日はもう帰るか。」 帰ろうとしたそのとき、小汚い男がぶつかってきた。小汚いというのは肌や髪の話で、服装は綺麗であり、俺とよく似通った服装をしていた。白い無地のパーカーだ。 「痛…なんだあいつ。」 「いたぞ!捕まえろ!」 刑事らしき男が俺に向かって血相を変えて叫んだ。 「は?捕まえる?俺をか?なんで?」 「とぼけるな!俺たちは取引の現場を見てるんだ!観念するんだな!」 足元を見ると白い粉が大量に散らばっていた。更に警察がボディーチェックをする。ポケットから破れた袋と白い粉が見つかった。 「19時41分。現行犯逮捕する。まったく、信じられない量を輸入しやがって。」 抵抗する間もなく俺の手に手錠がかけられた。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!