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島につくなり飛行機を下ろされ、建物の中に連れて行かれた。
「着いたぞ。ここが天国だ。」
やっと目隠しを外された。比較的暗い廊下だ。左右にはいくつか部屋がある。そして奥にある扉の先には牢屋が見える。きっとあそこが監房だと思った。
「ここはどこなんだ?」
「所在地不明の刑務所って聞いてないのか?言えるわけないだろ。わざわざ専用の滑走路まで用意して隠してるのに。人里離れた荒野とでも言っておくよ。」
そんな話をしながら奥の部屋まで連れて来られた。
天国刑務所。縦に長く両脇には階段があり2階建で、1階にも2階にもずらっと房が並んでいる。40部屋くらいだろうか。手前の方の部屋は大人数の雑居房らしい。吹き抜けになっており、ここからだと1階と2階全ての房をなんとなく見渡せる。
「お前の房は左側2階の奥から2番目だ。」
「29って書いてある房か?」
「そうだ。おら、さっさと歩け。」
これからしばらく暮らす房に向かう道中、様々な野次が飛んできた。
「おう新入り、お前何年だ?なにしたんだ?」
「顔はそこそこ男前だがちょっと筋肉が足りねぇな。ひょろい。」
「頭良さそうな顔してんな。大卒か?ボスはお前みたいなのが嫌いなんだ。しっかり挨拶しろよ。」
29番の房に着く。
「ここが今日からお前の家だ。じゃあ同房者と仲良くやれよ。」
そう言うと看守は俺を房に押し込んだ。扉は電子制御されているらしく、勝手に開閉した。
どうやら2人部屋らしい。同房の男は犯罪者とは思えぬほど優しそうな顔をしている。そして気さくに話しかけてきた。
「おう新入り、名前は?俺は渡辺 浩太っていうんだ。よろしくな。強盗やろうとしてここにいる。」
「白羽 由一だ。麻薬密売の冤罪を着せられてここにいる。」
「冤罪か。ならそのうち証拠が出てここを出るのか?」
「刑期終了までここにいることはないだろうが、1ヶ月後に用事があって困ってる。」
「そうか。大事な用なのか?」
「弟を助けに行かなくちゃいけない。」
「そうか…それは一大事だな…」
浩太はそこまで言うと沈黙した。普段の会話なら気まずくなるくらい。そして小声で言った。
「…俺と脱獄しないか?」
…続く。
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