第1話「大事な用事」

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島につくなり飛行機を下ろされ、建物の中に連れて行かれた。 「着いたぞ。ここが天国だ。」 やっと目隠しを外された。比較的暗い廊下だ。左右にはいくつか部屋がある。そして奥にある扉の先には牢屋が見える。きっとあそこが監房だと思った。 「ここはどこなんだ?」 「所在地不明の刑務所って聞いてないのか?言えるわけないだろ。わざわざ専用の滑走路まで用意して隠してるのに。人里離れた荒野とでも言っておくよ。」 そんな話をしながら奥の部屋まで連れて来られた。 天国刑務所。縦に長く両脇には階段があり2階建で、1階にも2階にもずらっと房が並んでいる。40部屋くらいだろうか。手前の方の部屋は大人数の雑居房らしい。吹き抜けになっており、ここからだと1階と2階全ての房をなんとなく見渡せる。 「お前の房は左側2階の奥から2番目だ。」 「29って書いてある房か?」 「そうだ。おら、さっさと歩け。」 これからしばらく暮らす房に向かう道中、様々な野次が飛んできた。 「おう新入り、お前何年だ?なにしたんだ?」 「顔はそこそこ男前だがちょっと筋肉が足りねぇな。ひょろい。」 「頭良さそうな顔してんな。大卒か?ボスはお前みたいなのが嫌いなんだ。しっかり挨拶しろよ。」 29番の房に着く。 「ここが今日からお前の家だ。じゃあ同房者と仲良くやれよ。」 そう言うと看守は俺を房に押し込んだ。扉は電子制御されているらしく、勝手に開閉した。 どうやら2人部屋らしい。同房の男は犯罪者とは思えぬほど優しそうな顔をしている。そして気さくに話しかけてきた。 「おう新入り、名前は?俺は渡辺 浩太(わたなべ こうた)っていうんだ。よろしくな。強盗やろうとしてここにいる。」 「白羽 由一(しらは ゆいち)だ。麻薬密売の冤罪を着せられてここにいる。」 「冤罪か。ならそのうち証拠が出てここを出るのか?」 「刑期終了までここにいることはないだろうが、1ヶ月後に用事があって困ってる。」 「そうか。大事な用なのか?」 「弟を助けに行かなくちゃいけない。」 「そうか…それは一大事だな…」 浩太はそこまで言うと沈黙した。普段の会話なら気まずくなるくらい。そして小声で言った。 「…俺と脱獄しないか?」 …続く。
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