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「なるほど。つまり弟を助けたいってのは、その組織から助け出したいってことだな?」
「その通り。そのためには組織を潰すしかない。けど外からじゃ悪事の証拠は出なかった。だから俺も組織に潜入した。弟に内緒でな。俺は弟よりも優秀だ。この頭脳を使って手柄を立てて、組織の信用を勝ち得た。今じゃ副支部長だ。」
「おお、それで、証拠は手に入ったのか?」
「イエスともノーとも言える。俺が持ってるのは活動記録の一部が社長の手書きで記された紙だ。保管を任されてて隠し場所は俺しか知らない。でも、何重にも暗号化されてるからこれだけじゃ証拠にならない。暗号の解き方が記された紙も必要だ。」
「それは手に入りそうなのか?」
「手に入る予定だった。どうやらうちの組織には競合相手がいたらしく、競合相手のお偉いさんがうちの本部から盗んだ。その証拠品を取り戻す任務を俺が勝ち取ったんだ。向こうの犯罪の現場をフィルムカメラで抑えたから、来年の1月4日に取引してお互いに証拠を渡す話になってる。」
「なるほどな、お前が脱獄をするのは罪を晴らしてからじゃその取引に間に合わないからだ。」
「そうだ。取引に間に合わなければ俺の家族である弟は殺されるだろうし、俺も出所し次第殺される。」
話を聞き終えた浩太はしばらく黙った。そして目を潤ませながら聞いてきた。
「お前、家族想いのいいやつなんだな。お前も、お前の弟も本当に尊敬するよ。俺なんて家族を救うどころか悪さして捕まって、余計に苦しめた。」
「けど愛は本物なんだろ?」
「そうだけど、愛してればいいってもんじゃない。」
「そうだな。ひとまずお前がするべきことは娘さんが亡くなる前に抱きしめてやることだ。そのためにはここの刑務所の情報を教えろ。」
「あぁもちろん。なんでも聞いてくれ。」
「ありがとう。それじゃあ…」
…続く。
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