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 結婚して二十年。夫の義信とはそこそこ上手くやってきたつもりだった。もちろん多少の波風が立ったことはあったが、そんなものはどこの家庭でも一つや二つあることだろう。   しかし、ここ数ヶ月は様子が違った。私達夫婦は明らかにギクシャクしていた。原因は私だ。わかっているのにどうすることもできない自分の意固地な性格を恨んだ。  今日はクリスマスだというのに義信は何も言ってこない。リビングで静かに新聞を読んでいる。こっちは何日も前からずっと待っているのに……。イライラが頂点に達した私は一気にまくし立てた。 「記念日の計画を立てるのはいつも私ばっかり! 私が言い出さなかったらなんにも無いわけ? 今日だってケーキの一つも買ってきてないじゃないの。子供もいないんだから、せめてこういう行事くらい二人で楽しまないでどうするの!?」  義信はただ黙って聞いていた。新聞をたたみ、暗い目でこちらを一瞥すると、全く言葉を発さないままドアの向こうに消えた。体中がかっと熱くなった私は、涙を堪えながらすぐさま家を飛び出した。    
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