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しばらく来ない間に、実家のある駅の周辺は随分と様変わりをしていた。改札を出てすぐの所にできたお洒落な洋菓子店は、クリスマスケーキを求める若い女性客で賑わっていた。私以外はみんな幸せそうにみえる。そんな人達の間を縫うように横断歩道を渡り商店街に入ると、ジングルベルの陽気な音楽が耳についてなんだか癪に触った。
日が落ちるには少し早い時間だったけれど、鉛色の低い雲のせいであたりはどんよりとしていた。私は白い息を吐きながら実家へと急いだ。
チャイムを鳴らすと、母が待ちかねたように玄関の戸を開けた。
「外は寒かったでしょう?」と私を家の中へ招き入れた。
「雪が降りそう……」
蚊の鳴くような声で答えて居間に直行すると、私は炬燵にもぐり込んだ。
母がマグカップにいれたミルクティーを持ってきてくれた。甘い香りがあたりに広がって、一口飲むと胸の奥まではっきりと温もりが伝わった。
「義信さんと何があったか知らないけど……。とりあえず二階の部屋は使えるようにしてあるから」
そう言いながら母も炬燵に入ってきた。
「急にごめん。今日は泊めて」
私は目を合わさずにカップを握りしめた。
「気が強いのは私譲りかしらね?」
離婚して女手一つで私を育てた母は深い溜め息をついた。
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