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 ミルクティーを飲み終わった私は、久しぶりにニ階の自分の部屋に足を踏み入れた。机や本棚は昔のままだったが、以前使っていたベッドの上にはふかふかの客用布団が用意されていた。  コートを掛けようとクローゼットの扉を開けると、そこは段ボール置き場になっていた。手前にある箱を動かそうとした拍子に、中身がちらっと見えた。蓋を開けると、若い頃好きだったアーティストのCDやカセットテープがぎっしりと詰まっていた。懐かしさのあまりひとつひとつ手に取っていくと、私の目はあるカセットテープに釘付けになった。  それは、義信が私のために選曲し編集してくれたオリジナルテープだった。初めてのドライブデートの日に突然プレゼントされて、ひどく感激したのを昨日のことのように思い出した。  ラベルには曲名と歌手名が丁寧にレタリングしてあった。几帳面に記された日付はもとより、各々の曲のイメージに合わせたシールまで貼ってあった。古いカセットデッキにテープを挿入して、プレイボタンをそっと押した。空で歌える思い出のラブソングが、私を義信と出会った頃にタイムスリップさせた。    
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