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 義信とは友人の紹介で知り合った。眼鏡をかけた真面目そうな人――。それが彼の第一印象だった。いきなり「大学を卒業して県庁に勤務しています。趣味は映画鑑賞です」と、まるでお見合いのような自己紹介を始めたので、私は小さく吹き出した。 「結婚を前提に付き合ってください」  三度目に会った時、家まで送ってくれた義信は私の目を真っ直ぐに見て告白した。 「男の人は真面目が一番。経済的な安定が尊敬につながり、やがて大きな愛情に変わるんだから」という母の口癖が頭をよぎった。  正直に言うと、その時点では彼のことをそこまで好きかどうかわからなかった。でも、「結婚を前提に」という魔法のようなフレーズが、私に「はい」と返事をさせた。  義信は無口だったが思いやりのある性格だった。  付き合い始めて間もない頃、デートで水族館に行ったときのことだった。私は慣れないハイヒールのせいで靴づれをおこした。悟られまいと平静を装っていたが、足が痛くてとうとう歩けなくなった。私はしぶしぶ事情を説明した。義信は「わかった」とだけ言うと、すぐ薬局に走りバンドエイドを買ってきた。そして一番近い靴屋を探して、車で私をそこへ連れて行った。迷惑をかけたのに、嫌な顔一つせず優しくテキパキと対処してくれた義信に、私の心は鷲掴みにされた。  天気の良い休日には、よく近くの公園でピクニックをした。ポットのお茶を飲むとき、義信は必ず骨ばった手で眼鏡をはずす。その仕草に私はいつもドキッとした。大きな犬が寄ってくると、彼はよしよしと犬の頭を撫でた。サッカーボールが転がってきたときには、「ほら! いくぞ!」と嬉しそうに子供達にボールを返した。その光景がとても眩しくて、私は思わず目を細めた。  気がつかないうちに、私は胸が苦しくなるほど義信に恋をしていた。              
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