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突入
「お姉さん!見て窓に人が」
「あれは警察じゃないの?そこの人、窓を開けて!」
彼女の指示で空いた窓。警察関係者が乗り込んできた。
ほっとした一同。彼らは爆発処理班だと話した。そして一両目を確認し、何もないことがわかったため、全員で一両目に移動した。
「お姉さんも、ほら」
「う、うん」
そして二両目、三両目を警察は確認した。そして何もないと判断したようだった。
「よかったですね。お姉さん」
「そう、ね」
どこか厳しい顔の彼女。女子中学生は気になっていた。
そんな時、電車は駅に到着した。
「よかった。さあ、降りましょう、お姉さん」
「……先に行って。良いから」
「お姉さん?……きゃああ」
よくみると。彼女の背後の男はナイフを光らせていた。
「逃げて!早く!」
電車はパニックになった。乗客は散るように降りた。
残ったのはいつものメンバーと警察だった。
「私はいいの!ねえ。あなた、彼女を連れて行って」
「お姉さん!?お姉さんを置いていけないわ」
「行くんだ。ここにいても。俺たちは足手まといだ」
ジャージ男子はそう言って女子中学生を連れ出した。彼女は他の仲間にも訴えた。
「社長さん。部下さんも、そのおじさんをお願い」
「俺はおりねえぞ」
「お姉さん?どうしてお姉さんが」
青ざめる社長。嫌がる作業員おじさん。冷静な部下。人質の彼女は必死に叫んだ。
「とにかく。私はいいの!」
「女!黙れ。俺はな。誰でも良いから人を刺してみたかったんだ」
犯人の男。目線を彷徨わせ、つぶやいた。
「誰でも良いんだよ……」
これに社長は叫んだ。
「ふざけるな!だったら。そんな女性を狙わずに屈強な男にしろよ!弱虫、卑怯者。家に帰れ!」
「てめえ」
緊迫した様子。しかし、警察はジリジリと間合いを詰めていた。
犯人はこれに気がついていない様子。社長は煽ろうと叫んだ。
「だったら俺を狙ってみろよ?なあ。できるのかよ?」
「この野郎」
この時、誰もが予想しないことが起こった。
ジリジリジリジリ!
いきなりの電車のベル。犯人が一瞬、気を取られた。
「突入!」
この時、警官女子が突入した。そして犯人の腕を掴み倒し、関節技を決めた。
「くう?どうだーーー!」
「痛い痛い痛い!」
この隙に他の警官が人質の彼女を抱き止めた。
「人質確保です」
「犯人確保だ!」
「抑えろ!」
「手錠持ってこい!」
電光石火の犯人逮捕の様子。電車の外から拍手の音が沸き起こった。その後、彼女は駅のホームのベンチによろよろと座った。
「大丈夫?お姉さん」
「う……うう」
泣いている彼女。怪我はない様子。駅のホーム。いつものメンバーが囲んで励ました。
「お姉さん。怖かったでしょう」
「もう、犯人はいないですよ」
「姉ちゃんは大したもんだよ」
「……みなさんには本当にお世話になりました」
彼女はポツポツと話し出した。
「私。今日で、この町を出て行くので。これで、吹っ切れました」
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