墓地の陰気

8/15
309人が本棚に入れています
本棚に追加
/360ページ
 羅刹鳥は秋人の顔に手を伸ばし、目玉を狙ってくる。  そこへ真尋が錫杖で割り込んで、羅刹鳥を秋人から遠ざける。  人を殺害し、目玉を喰らったと言う羅刹鳥に真尋も怒りを感じ、その怒りを自分の技に乗せる。 「斬石!!」 「………っ!?」  妖力を纏った鋭く尖った石が羅刹鳥を四方八方から襲う。  人を一方的に殺した怒りが攻撃を増強される。 「真尋………?」  秋人は真尋様子が変だと感じた。  よく見ると瞳が赤く染まっていて、それに妖気が強まっている。  羅刹鳥に対し、先程よりも更に重たい攻撃を浴びせる。  それは秋人が悪寒を覚える程に………  羅刹鳥はたまらず悲鳴を上げ、重傷を負い満身創痍で空へ飛び立った。 「逃がすかよ!!」 「待て真尋!!」  空へ逃げた羅刹鳥を逃すまいと追おうとした所を秋人が止める。  その直後、羅刹鳥は嘴を大きく開き、青い炎の球を雨を降らすように吐き出した。  秋人は慌てて自分の炎を出し、盾にして防いだ。  しかし羅刹鳥の炎は木々に燃え移り、真尋達は炎に囲まれてしまう。  焦る真尋を大丈夫だと落ち着かせながら秋人は羽団扇を空に翳した。 「天よ、雨を恵み賜え」  そう唱えるとさっきまで晴れていたのに空が急に暗くなり、黒い雨雲が空を多い尽くす。  そしてぽつりぽつりと雫が真尋の頬を掠めたかと思えば、ザァーっとどしゃ降りの雨が降る。    木々に燃え移った炎はその雨によって鎮火した。 「………チッ、天狗めが」  天候を操る大天狗の術に羅刹鳥は空中を舞いながら目を細める。 「観念しろ。 お前に勝ち目は無いぞ羅刹鳥!!」  秋人の怒声に羅刹鳥はフンと鼻を鳴らす。 「何故人を喰ってはいけない? 貴様らも妖の端くれの癖に人に肩入れする理由が分からんな」 「お前には関係ない」 「あっそ………まぁどうでもいいけど、人も家畜を食う癖に何故妖が人を喰ってはいけないんだ? 人と家畜、そして妖の違いとはなんだ?」 「…………」  そう聞かれ、押し黙ってしまった。 「答えられないのか? そうだろうな。 妖にとって人とは家畜のようなものだ。 それを非難する道理は人にはない筈だ」  そう言われ真尋は確かにと考えてしまった。  人が家畜を食べるのは良くて、妖が人を食べては駄目な正当な理由を見付けられなかった。
/360ページ

最初のコメントを投稿しよう!