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吹いた者を死に誘い込むと言う呪いの笛を吹いてみろという無茶な指示に真尋は戸惑う。
「いや無理です」
呪われるかもしれないのに誰が吹きたいと思うだろうか?
だが真尋が拒否する理由は別にあった。
「俺笛吹けないです。
リコーダーですら音鳴らすだけで、まともに演奏できるほど器用じゃありません」
「ああ、そこなんだ……」
利音もまさか拒否される理由が吹きたくないではなく、吹けないからとは思ってもなかったので少々言葉に詰まる。
「大丈夫、ただ音鳴らすだけでいいから」
「え~……」
利音に無理やり押し付けられ仕方なく笛に唇を付け、ふぅと息を吹いてみる。
しかし音は鳴らない。
「あれ?」
「君まず吹き方が違う」
「こう?
………あれ、鳴らない」
「違う!!
ああもういいから貸せ」
下手くそな真尋に痺れを切らした利音は笛を奪い取り、こうだと見本を見せるようにピーッと鳴らしてみせた。
「おお~凄いですね利音さん」
「………」
万が一呪いを受けても妖である真尋ならそれほど影響は無いだろうと思い吹かせたつもりなのに、結局自分が吹いてしまった。
どうも彼といるとペースが乱れると、頭を掻いた。
そして笛はと言うと、黒いモヤのような妖気を放ち始めた。
やはり呪いの笛と言うのは本当のようだ。
警戒した真尋は一歩二歩と利音から距離を取り、戦闘体勢に入る。
黒いモヤはだんだんと大きくなり、人形へと変貌し、低い唸り声を上げた。
そしてそれは白く光る目を笛を吹いた利音へと向け、狙いを定めた。
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