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笛を返された利音。
受け取った笛を何を思ったのか、真尋の手を取るとその手に笛をまた戻した。
「俺ももういらないし君にあげるよ」
「いや意味分かんないです。
俺もいらないです」
そう言ってまた利音に返す。
そうやってお互い押し付け合って押し問答していると、怨霊が2人へ飛び掛かってくる。
「うわっ…!!」
完全に不意を突かれた真尋は防御体勢もままならず、後ろに倒れてしまった。
すると利音が真尋を庇うように前に出る。
そして人差し指と中指で五芒星を描くと、その跡に白く光る五芒星が浮き上がる。
「滅」
その言葉と共に五芒星はその形のまま怨霊へと放たれた。
「ぐぁぁぁぁっ」
怨霊は悲鳴を上げ五芒星に触れた所から赤く燃えるように消滅していった。
「利音さん……」
あっという間に怨霊を片付けてしまった。
彼の使う術については真尋は詳しくないのでその力がどの程度なのかは知らない。
知らないがその霊力が真尋の妖力よりも上なのは分かった。
真尋の方を徐に振り返る利音の眼光は鋭く恐ろしさを覚え、思わず息が詰まった。
「全く、対戦するなら最後まで自分でやんなさいよ」
「………」
言葉を紡ぐ利音は先程の恐ろしさなど感じず、いつもの彼の雰囲気に戻っていた。
ここでふと真尋は我に返った。
「いや、最後まで自分でって……
そもそも利音さんが変な笛を持ってきたからこんな事になったんじゃないですか!?
責任転嫁甚だしいですよ」
まるで真尋が祓うべきかのように言われ甚だ遺憾である。
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