呪いの笛

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 利音のせいで余計な仕事までさせられたと給料以上の事をやっているような気がする。 「そうですよ。 これ、いくらか手当てくらい出ますよね?」 「………そう言われても無い袖は振れないし」  そう言って両手をひらひらと横に振った。 「ブラックだ………」  真尋は今からでも違うバイト先を見つけようかと本気で考えてしまった。 「まぁ金銭的なものはないけど、これならあるよ」 「??」 「はい、笛」  利音は再び真尋の手を取り押し付け合っていた笛を渡した。  流石にキレた真尋はその笛を自らの能力、天狗火と言う文字通り天狗が発生させる炎で燃やした。 「あっ、折角の笛が…… 職人が汗水垂らして作った物だよきっと」 「どうでもいいです。 そう言うのいらないんで!! そうですね、じゃあ……犬神下さいよ」 「犬神?」  思ってもみない要求に巨大化した犬神の方に目をやった。  現在の御主人様の横でお座りして大人しく待っている。 「何?犬好きなの?」 「動物なら何でも好きです」  頬を緩ませる真尋に利音は苦い顔をする。 「残念ながら飼い主は俺だよ。 そもそも君、調伏術なんて出来ないでしょ。 一歩間違えると喰われるよ? まぁ、君に術が使えてもあげないけどね」  そう言われて真尋は口を尖らせた。  確かに調伏の術は使えないし、利音だからこそ従わせる事が出来ることくらいは分かる。  だが、可愛い……  形は日本犬に似ているが耳は少々小さく、 尻尾は垂れ下がっている。  そして何より狼のような顔立ちがまた愛らしい。  触りたいオーラを出しまくりな彼に飼い主はため息を付いてこう妥協案を出す。
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