緋色の罪

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緋色の罪

 ゆったりとした時間が流れる休日の日曜日。  宗像骨董店の店兼住宅の居間ではワンワンと犬の鳴き声が響く中、真尋と利音は朝食を取っていた。 「真尋、ハチミツ無くなったんだけど、昨日君買い物行ったよね? 買ってないの?」 「知らないですよ。 それくらい自分で管理してください」  既にハチミツが塗りたくられた食パンだが、まだ足りないとばかりに不満を漏らす利音に真尋は冷たくあしらって自分は七味と醤油を塗った食パンを食べる。  二人がハチミツで言い争っている横でネコこと中型犬サイズの犬神は先程からずっとワンワンと吠え続けている。  真尋によって犬神なのにネコと名付けられたその目線の先には壺がある。  男性の腹くらいの高さの棚の上に飾られているその壺に向かってネコはずっと吠え続けているのだ。 「利音さん」 「何?」 「やっぱあの壺他の所に置きません? めっちゃ威嚇してんじゃないですか」  そう、ネコは壺に向かって威嚇をしているのだ。  鋭い剣幕で、時折ウーッと唸り声も上げている。  何故ならその壺はただの壺では無いからだ。  壺の側面には顔が付いており、ネコを睨み付けながらべーっと舌を出して挑発している、妖なのだ。  所謂、付喪神(つくもがみ)と言う長い年月を経て魂を持つとされる妖の一種である。  利音の趣味で引き取られたその壺はインテリアと称して居間に飾られていた。  しかし、ネコにとっては自分のテリトリーを侵す怪しい存在である。  それに自分より高い所から挑発してくるので余計に気に入らないようで、威嚇を止める気配がない。 「あれ結構気に入ってるんだけど」  曰く付きの物が好きな利音はこの壺の付喪神もインテリアとして気に入っている。  表情が色々変わるので見ていて面白いのだ。  しかし飼い犬はお気に召さないようだから困った。
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