不思議な骨董屋

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 ピピピピと言う音と共に目が覚めた青年高住真尋(たかすみまひろ)は懐かしい夢を見ていたとゆるゆると未だ鳴り響く目覚まし時計を止め上半身を起こす。  シンプルな和室に敷かれた布団を畳み、着替えを済ませると部屋を出て、二階から一階へと降りて洗面所へ行く。  それから居間へ行くとそこには肩まで伸びたザンバラな髪を掻き、あくびをしながらちゃぶ台の前に胡座をかく若い男性の姿がそこにあった。 「利音(りおと)さんおはようございます。 早いですね」 「君がいつも遅いんだよ」  まだ寝ぼけ眼と言ったような様子のその男は焼きたてのパンとコーヒーを二人分用意していた。  真尋もテーブルに着き頂きますと手を合わせると、男はハチミツを手にし、これでもかと言うくらい塗りたくる。 「相変わらず塗り過ぎじゃないですか? もう一瓶なくなってるじゃないですか」 「うるさい、君こそパンに醤油と七味なんて変な食べ方してるくせに人のこと言うんじゃない」 「そんなに変ですか?」 「変」  変だと言われた醤油と七味を全体にまぶした食パンを美味しいのにと首を傾げながら頬張る真尋は、目の前の男、宗像利音(むなかたりおと)の営む骨董屋兼住宅に住まわせて貰いながらバイトをし、一月半が経とうとしていた。  朝食を食べ終わり、居間の先にある店で開店の準備を始める。  まだダンボールの中に収められているのは新しく仕入れた骨董品らしく、それをひとつひとつ棚に陳列していくが、真尋にはその価値が全く分からない。  また同じような物をこんなにと心の中で呟いていると、手に取った壺の側面に顔が現れ目を瞬かせており驚いて思わず投げてしまいそうになる。 「ちょっとなんですかこれ!?」 「ああ間違えた、それ商品じゃない。 俺のコレクション」 「はぁ、そうなんですか」  普通なら恐れ戦く現象なのに淡々と答える利音に、真尋ももはや慣れたようにそれをダンボール箱へ戻した。 ここは普通の骨董屋とは違う奇妙な店だった。
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