緋色の罪

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 取り敢えず利音と連絡を取ろうとスマホを取る。  そんな真尋の横で先程からネコがずっと唸っている。  女性に対して一定の距離を保ち、牙を見せ威嚇をしている。 「こらネコ、止めろって。 すみません、人慣れしてなくて……」 「いいえ。 ごめんなさい、今日はもう時間が無いのでこの辺で失礼します」 「え?あ、あの……」  そう言って彼女は店を出ていってしまった。 「なんだあの人……」  不思議な人だった。  普通の女性に見えるが、どこか雰囲気に違和感がある気がした。  何か引っ掛かる……  気が付けばずっと唸っていたネコも大人しくなっている。  やはり何かあるのかもしれないと今更思うが時既に遅し。  彼女が去って間も無くの事。  ただいまと利音が帰ってきた。 「利音さん遅いですよ!!」  丁度入れ違いになるように帰ってきた彼に不満を漏らす。  当然利音は何故彼が怒っているのか分からないので説明を求め、先程の女性の事を聞いた。 「ああ、多分あの女かな?」 「え、知ってるんですか?」 「さっきそこでうちの蔵の方角を見てた女の人がいたから……」  利音が帰ってくる際に店の横の路地から蔵の方角を見ていた女性がいたので声を掛けた。 『うちに何かようですか?』  女性は利音を見て一瞬考えるように横を一瞥し、再び利音へ目線を戻した。 『いいえ、なんでも……』  そして女性は一礼すると去って行った。 「あの女、見た感じなんか憑いてたね。 何かまでは分かんないけど」 「え、マジですか? だからなんか変な感じしたんだ……」  彼女の中には何か別の気配がした。  だからネコも彼女を警戒し威嚇していたが、 まだ未熟な真尋には違和感の正体までは分からなかった為何か憑いてるとは気付けなかった。
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