339人が本棚に入れています
本棚に追加
「は?」
高と名乗る大柄な男の妖は、自分には判断出来ないし権限も無いと言った。
「そもそもこの陽炎を取り仕切るのは山ン本と言う妖だ。
そいつに聞いてくれや」
「…………」
何と無く高が判断出来ることではないとは思っていたが、やはりそうかと思った。
だが彼を倒せば何かしら聞き出せるかもしれないと考えていたことは当たりだった。
まずこの世界を彼らは陽炎と呼んでいる事は初めて知った。
ここへ来たことがあった緋葉もそんなことは言ってなかった。
まぁこれは後で問い質すとして、山ン本と言う妖の存在。
名は聞いたことがある。
おそらく山ン本五郎左衛門の事だろう。
山ン本五郎左衛門。
沢山の眷属を引き連れている大物の妖で、魔王とも呼ばれる存在。
その姿は武士だとも、三つ目の烏天狗だとも言われるが、いずれも仮の姿だと言われており、本当の姿は誰も知らない。
そんな謎多き存在がこの陽炎と呼ばれる世界を統べる者とは、面白い情報を得た。
だがその山ン本は何処にいるのか………
そう高に訊ねようとしたその時だった。
「利音さん危ない!!」
「………!?」
真尋のその声に振り返ると、大きな炎が利音に向かって来ていた。
その炎は真尋が妖との戦いにおいて、新たな武器を得た事で天狗火でも強化出来るのではと、炎に妖力を乗せて妖達に向かって放った所妖がそれを避けた。
するとその先には利音がいた。
「百鬼絶破!!」
利音は大きな障壁の術をその炎に向けて放つ。
本来は攻撃技だが、今回は防御するために使う。
利音の術は真尋の炎と衝突すると、拮抗するように押される。
利音も霊力をより込めて炎を防ぐが、中々炎が消えてくれない。
そのまま押し返すように防いでいると、二つの術はその場で破裂するように相殺され、炎の残骸が飛び散り、妖達が慌てて逃げたり、防御して難を逃れていた。
「大丈夫ですか利音さん!?」
「問題ない」
慌てて駆け付ける真尋に冷静に対応する。
「すみません。
まさか利音さんの方に行くとは思わなくて………」
流石の真尋も頭を下げる。
それを利音は問題ないとさらっと流した。
しかしながら真尋の攻撃を消して見せた利音ではあるが、流石にあの攻撃は重かったなと感じた。
最初のコメントを投稿しよう!