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まだまだ未熟な真尋だが、覚醒すれば利音でも相手をするのは骨が折れると感じている。
それでも自分の方が力は上だと利音は自負している。
と言うよりプライドだろうか?
真尋には負けたくないと言うプライドが、彼自身は気付いていないが、時たま見え隠れしている。
「まぁそれよりも……」
一連の攻防を見て胡座をかきながら感心している高へ、利音は改めて質問する。
「その山ン本は何処にいる?」
安達は無事保護出来た。
現在緋葉が安達を連れて利音の元へと駆け付ける。
後は通行手形のみだ。
「さぁな。
ぶっちゃけ、山ン本についてはほとんど知らねぇ。
言っちまえば、その正体すら知らねぇ」
どうやら妖の中でもその正体は知られていないらしい。
「山ン本……?
まさか利音殿、会おうと言う気であるか?」
緋葉が反応した。
緋葉も名前は聞いたことがあるが、詳しくは彼も知らないと言う。
だがその山ン本に緋葉の元主で、真尋の高祖父は会ったことがあると昔言っていた。
緋葉がどんな者かと聞いたら、食えぬ奴だと言っていた。
他にも何か言っていた気がするが、生憎二百年以上前の事で、記憶が朧気だ。
そんな妖に人間、しかも祓い屋である利音が会おうなど無謀だと緋葉は思う。
それに周りを見渡すと自分達を排除しようとまだ沢山の妖が囲んでいるので、今回は諦めてここを出た方がいいのではと考える。
「ん~どうしようかな……
いっそここぶっ壊せば山ン本現れるかな?」
「利音殿!!」
いっそ暴れたら山ン本を誘き出せるかと考えたが、絶対に駄目だと緋葉に叱られた。
「てかさ緋葉、お前この世界陽炎って呼ばれてんの知ってた?」
陽炎と呼ばれるあの世とこの世の狭間。
緋葉の口からその陽炎の言葉は聞いたことがない。
「ええ、まぁ………
貴方達が狭間と呼んでいらっしゃるのでそれで良いかと……」
利音や真尋が狭間と呼ぶならそれが正解だと、緋葉の変な忠誠心のようなものが、陽炎と言う名をわざわざ伝えなくてもいいと言う結論に至っていた。
それを聞いた利音は変なところで生真面目過ぎると気が抜ける。
しかしゆっくりもしていられない。
利音達の実力を目撃し、様子見していた妖がそろそろ襲い掛かって来そうだ。
さぁ、どうするか……
考えあぐねていると空に大きな黒い物が現れた。
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