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陽炎の出口へ緋葉の案内で進む一行。
歓楽街を抜けた先には鳥居が建っておりそこを通ると、今まで鳥居の奥はただの森だったのに、突然目の前に石段が現れる。
しかも下からは到着地点が見えないその距離に、真尋と利音は憂鬱そうな顔をするのに対し、安達は何もない所から石段が現れた事に少々パニックになっている。
「………俺飛べばいいか」
真尋は自分が天狗なのをいいことにこの長い階段を足で上らず、飛んで行こうとすると利音にガシッと肩を捕まれた。
「何勝手に一人だけ楽しようとしてんの?」
「いいじゃないですか!?
俺は疲れたんです!!」
今日は妖力を他の技に転用すると言う慣れない事をしたので疲れたと真尋は反論するが、利音は自分だって戦闘で疲れたのは同じだと口喧嘩になる。
そんなことを言ってると余計疲れるだろうに………
そんなレベルの低い喧嘩を他所に緋葉は早く行きましょうと二人を急かすので、仕方無いと二人は休戦して一段一段上がっていくと、数段上った所で目の前に大きな門が現れた。
10メートル程あろうかと言う大きな門の前には二人の3メートル程の全身が赤い鬼と青い鬼が槍を持って立っていた。
「…………」
たった数段上っただけで門まで辿り着いた事に、二人は先程のやり取りは一体何だったんだとげっそりする。
そして二人の鬼は門の中央から横へ移動すると同時に門がギギギと音を立てながら開く。
門が開ききると緋葉が先に進むので、その後ろを三人が着いて行くとそこは元いた利音の家だった。
「頭の中で帰る場所を思い浮かべたらその場所へ辿り着く」
そう緋葉が説明する。
すると安達が居間の座布団に倒れている田上を見つける。
「りんかちゃん!?」
安達は慌てて駆け寄り肩をゆさゆさと揺すりながら名前を呼んだ。
すると田上はんっと声を発し、ゆっくりと目を開いて瞬きを数回すると、安達が自分を覗き込んでいることに気が付いた。
「せん…ぱい?」
「りんかちゃん……」
田上は目を潤ませながら安達に抱き付いた。
「もう、何処行ってたんですか!?
心配したんですよ!?」
「ごめん……ごめんね……」
二人の再開に真尋達はそっと見守った。
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