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一頻り抱擁を交わした所で田上は真尋達に気付いた。
そして一人、異質な存在の緋葉を見て顔を引き攣らせる。
そこで皆緋葉が人の姿で無いことに気が付き、慌てて緋葉が人の姿になるが、後の祭りである。
当然彼女は緋葉が人で無いことを知らない上に、妖と言う存在すら本当にいるとは知らないので、人の姿になった緋葉がさっきまで一緒にいた人なので余計に混乱している。
「りんかちゃん大丈夫だから落ち着いて!!」
するとすかさず安達がフォローし、そして今までの経緯を話した。
あの世とこの世の狭間、陽炎の事、妖と言うものが存在する事を話すと、信じられないと言ったように口元に手を当てる。
しかし緋葉の姿を実際見てしまったので、信じざるを得なかった。
「えっと、貴方はその……妖怪なんですか?」
「そうだ」
田上は恐る恐る緋葉に訊ねると、はっきりと肯定する。
「因みに俺はちゃんとただの人間だから、誤解しないように」
利音が頭の横まで挙手して自分は妖でないと否定する。
「俺も右に同じ」
すると真尋も挙手して利音と同じだと言ったのに対し、利音がいや違うでしょと訂正しようとしたが、説明も面倒だなと思い直し、口を閉じた。
それから少し会話をし、安達は棚に置いてある壺君が気になったようで腰を屈めて覗き込むとギロッと閉じていた目が見開いて、驚いて声を上げて後退る。
「あ、ごめんなさい。
これ付喪神なんですよ」
「つ、付喪神……?」
「はい、壺君です」
「壺君……?」
真尋がそう説明書すると、安達は暫く興味深そうに見ていた。
「そろそろ帰りましょう」
「そうね」
安達にとって興味深いこの骨董屋だが、いい加減帰らないとと帰宅の準備をする。
「ああそうだ、この香炉貴方にあげるわ」
この香炉のせいで大変なことになったし、自分には扱えない。
それに利音が欲しがっていた物でもあるし、お詫びの気持ちでもある。
「じゃあ遠慮無く頂きます」
利音はタダで手に入ったと喜ぶ。
「その代わりと言ってはなんだけど、今度取材させてくれない?」
天狗の血を引く真尋と妖祓いの利音、そして妖そのものの緋葉。
面白そうだと安達は考えたが利音はすぐさま拒否した。
そして二人が帰る後ろ姿を玄関から見送った。
こうして今回の騒動は無事終結したのだった___
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