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家族
ジリジリと太陽の日差しがアスファルトを溶かしてしまいそうな程に照り付けるこの真夏の暑さ。
それとは逆に居間でクーラーの涼しい風を受けながらテーブルの横に寝そべる真尋のスマホの画面には35℃の文字が映し出されていた。
「ほんとずっと暑いですね~。
今日も35℃だって………
雨降らないかな~」
雨降れば少しは涼しくなるのにと、うつ伏せになって時折足をバタバタさせる真尋とは反対に、店の作業をする利音と緋葉。
人が作業していると言うのに一人だけ寛いでいるのは腹が立つ。
「こっちは仕事してんのに、いい身分ですね」
そう利音が皮肉を言うと真尋も負けじと反論する。
「今日はバイト入ってません。
なのに仕事を強要とか労基に引っ掛かりますよ」
「ここに住まわせてやってるんだから多少のお手伝いくらいしようとは思わないわけ?」
言い返せばまた返ってくる。
「住まわせて貰ってるのは感謝してますけど、その分生活費払ってるじゃないですか!!」
「家賃は貰ってない」
売り言葉に買い言葉。
そんな口喧嘩をしていると、ただでさえ暑いと言うのに余計に暑くなる。
普段天然マイペースのくせに、こう言う所だけはしっかりしている彼に言うだけ損だと、ここは年長者の利音が折れて仕事に戻る。
「ところでもうすぐお盆だけど、帰らないの?」
季節はお盆に入ろうとしている。
世の中帰省する人が多いであろうお盆に真尋は実家に帰らないのかと問うと、真尋は苦笑する。
「まぁ、秋人さんの所には一応帰ろうかなと………」
10歳の頃から真尋の実家は秋人の家に変わった。
けれどやはり実家とは生家だとも思っているが、その生家に真尋はあれから一度も帰ってはいないのだ。
と言うよりも帰れないと言うべきか………
高校生までは母親とたまに会って食事したりしていたが、高校卒業後は距離が遠くなってしまったので会っていない。
父や兄姉に至っては生家を出てからは一度も会っていない。
それどころか連絡すら取っていないので、現在何処で何をしているのか知らないのだ。
寂しいとは思うが、仕方がないと思っている。
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