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父が話し終えて、母がコーヒーを持って戻って来た。
真尋は母の淹れたコーヒーを一口飲むと、うつむく父に語りかける。
「父さんは謝るけどさ……
俺、自分が原因で家族がバラバラになったって思ってるから別に父さんが悪い訳じゃないし」
考えたらそりゃあ気味悪がられても仕方の無い事だったんだと思っている。
でも自分ではどうすることも出来ない。
誰も悪くは無いのだと今ならそう言える。
「多分、仕方無いと思うから、もういいよ」
「真尋……」
「もう辛気臭い話し終わり!!
あんまネチネチ言ってると体に良くないよ」
まだ体調の優れない父をまた悪化させたくないので、楽しい話しに切り替えた。
そこで真尋のバイトの話しになる。
「その、バイト先の人の家で暮らしてるのか?」
「まぁ………」
「またなんで……?」
親としては何故バイト先に居候しているのか気になるらしい。
親とは言え、一体どこまで話していいのやら………
妖祓いについても説明するとなると長くなるし、面倒だ。
「う~ん………成り行き?」
それ以外に言葉が見付からなかった。
しかし二人とも納得いかない様子だ。
どう言った成り行きなのかと説明を求めて来るので、なるべく簡潔にまとめる。
「俺が壺割っちゃって、妖の血を引くって気付いたその妖の専門家?みたいな人が興味持ってそこで働くならチャラにしてくれて、ついでに住んでいいよって?」
「………は?」
無理矢理な説明でさっぱり分からないと言う反応だ。
結局一からまた説明するハメになった。
「へぇ、妖怪祓いなんて職業もあるんだなぁ」
「そりぁ秋人さんもそうだし」
「え、そうなの?」
どうやら母も秋人が祓い屋をやってることは知らなかったらしい。
天狗の血を引いているのに?と聞いてくる。
妖について、視えない彼らにどこまで説明すればいいのか分からない。
妖については正直ほとんど何も知らない母だが、自分もその妖の血を引いているので関心はあるらしい。
いつも母と会う時は、学校の事や生活の事、友達はいるかなどばかり聞いてくるが、今回は初めてこちら側の事を聞いてきた。
それは真尋がもう大人と言うような年齢になって、対等に見られるようになったから。
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