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天明道には人の世界にも妖の世界にも居場所の無い者も在籍していると秋人が言っていた。
真尋は天明道の名前は伏せてそう伝えると、両親は興味深そうに聞いていた。
「妖怪の血を引く人が他にもいるのね」
母がそう言った。
「らしいよ。
俺は知らないけど………」
真尋は天明道の人間ではないので、他は竜樹しか知らない。
それから父の興味は真尋のバイト先に移る。
「真尋は骨董好きなのか?」
「いや、全然」
きっぱりそう言った。
しかしながら一応仕事なので商品についての知識は覚えなければらならいので、多少の知識は身に付いた、と思う。
興味無いながらも覚えてる最中だと言うと父は母に、寝室の押し入れに木箱があるので取ってきて欲しいと頼む。
母は父に頼まれ、寝室に向かう。
「数年前な、親父が亡くなってな……」
「そうなの?」
数年前、父の方の祖父が亡くなったそうだ。
しかし遠方に住んでいたので、真尋はほとんど会ったことがない。
正直顔も分からない。
現在祖父の家には、祖母と父の兄夫婦が住んでいるらしい。
「ああ、親父が死んで形見を貰おうと思ったが、案外これと言って欲しい物が無くてな。
取り敢えずこれでいいやと、うちに持ち帰ったのがあってな」
すると母がこれかしらと四角い木箱を持ってきた。
見てみると箱の蓋に漢字が書いてあるが、読めない。
開けてみると、古そうな青緑色の茶碗が入っていた。
「これ、お前にやるよ」
「え?」
「骨董屋で働いているお前にぴったりだ。
親父もお前になら持っていて欲しいと思うだろう」
「いや………」
いらない……。
綺麗な色をしているとは思うが正直いらない。
「親父もお前達孫に会いたがっていたがな。
仕事もあるし、なんせ遠いからな。
結局あんまり会わせてやれなかったから、せめて形見だけでも孫の傍に置いてやりたい」
「………ごめん、いらない」
こんなことを言われていらないなんて普通は言えないが、そこは真尋だ。
空気を読まずきっぱりと断る。
父は驚いていたが、それでも貰ってくれと言うので、真尋は雇い主にあげてもいいならと言うと是非、と言われた。
「実は父さんもいらないんじゃんか」
「う~ん、まぁ、持って帰ったはいいが、飾る場所も無いし、欲しい人が持ってるのが一番だろう?」
結局持て余した物を押し付けられただけだった。
祖父も可哀想に………
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