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外見はそっくりな真尋と祖父、時雄だが、性格は真尋と違って幼い頃から真面目でしっかり者だったので、真尋と接した当初秋人は戸惑っていた。
けれど時雄とはまた違う真尋はとても面白い子であると、同居生活を楽しんでいた。
「じゃあさ、ひいお祖母ちゃんってどんな人?」
真尋がそう聞く。
曾祖母、つまりは秋人の妻だ。
すると秋人は恥ずかしいのか少しはにかんで、言葉を考えてからおもむろに話す。
「そうだな……明るく元気の良い人だったな。
私の事もよく理解してくれた、私には勿体無い女性だ」
顔を赤く染めながらも、真っ直ぐそう言った。
今でも好きなんだろうなと真尋は微笑ましく思う。
「そっか………」
今日は先祖の思いがけない話が沢山聞けた。
長年絶縁状態だった父とも再会出来たし、和解出来た。
とても充実した一日だった。
それから一日秋人の家に泊まって利音の家に戻った。
このお盆と言う時期は妖が多く現れ、天明道にも沢山依頼が来て、秋人も忙しいようで任務に呼ばれたので、真尋ももうこの家にいる理由もないからだ。
「はいこれお土産です」
そう言って真尋が利音に差し出したのは父から貰った祖父の形見の茶碗。
それを利音が受け取って品定めをする。
「七官青磁の茶碗か……」
「七官青磁……?」
「そ、中国の奴ね。
で、なんでこれを?」
流石は利音。
この茶碗の事もちゃんと知っているようだ。
「父方の祖父の形見らしいです。
父から貰いました。
いらないんであげます」
「形見を?」
祖父の形見をいらないと人にあげる心理が理解出来ない利音に真尋はこう続けた。
「父も持って帰ったけど、置く場所無いし、特に骨董には興味無いらしいので、欲しい人が持ってればいいって」
「なるほど、真尋のその適当な性格は父親譲りな訳ね」
「失礼な。俺そんな適当な性格してません」
そう否定する真尋の言葉は無視して、この茶碗は素直に受け取るべきかと迷うが、中々に悪くはない。
七官青磁の花瓶や皿は店の商品として置いてあるが、流石にこれを商品で出す事は出来ないので、壺君の隣におくことにした。
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