家族

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 隣に茶碗が置かれた事に壺君は興味津々に見ている。  隣の金魚の妖には不満気なのに、この茶碗はどうやら壺君のお気に召したようだ。    その翌日の事だった。 「……………なんで?」  昨日何でもなかった茶碗の側面にぱっちりと目と口が付いていて、弱いながらも妖気を纏わせている。  そして真尋を目の前にカタカタと揺れる。 「今はお盆の時期であるから妖が生まれやすいのだろう」 「それにうち、いつの間にか妖だらけになって、それに影響されたんじゃない? ……店の方に結界張っておいて良かった」  霊界が近くなるお盆と、真尋を始め、緋葉やネコ、壺君、金魚と、いつの間にか妖がこの家に居着いているので、それに影響して目覚めてしまったのだろうと推測される。  なので利音は店の商品が魂を持ってしまわないようにと結界を張っておいたが、茶碗の事まで頭は回らなかったようで、最初気付いた時はしまったと思った。 「てかなんで二人ともそんな冷静なの?」  利音も緋葉もテーブルの前の座布団に座りお茶を啜っている。  特に慌てる様子もない。 「こんだけ家が妖だらけなんだから、一匹二匹増えたところで大して変わらないじゃん」  最早妖が沢山いるので弱い付喪神が増えたとていないも同然と利音は考える。  緋葉も自身が妖であるし、付喪神の誕生に少々感動を抱いてすらいる。 「良かったじゃん、これで形見が無慈悲に捨てられる事も無いし」 「まるで俺が捨てようとしているかのように言わないで下さい」  あげると言っただけで捨てるなんて一言も言ってないのにと反論する。 「しっかし、この家も妖屋敷になっちゃっな」  元々妖なんて居なかったこの家の中がいつの間にか妖だらけになった。  壺君達を蔵に入れようかと呟くと、壺君がいやいやと横にカタカタと動き、真尋も可哀想だと反対する。  この中でただの人であるのは利音だけだ。  なんだかアウェーに感じる。  こうしてまた、妖の仲間が増えたのであった。  しかしその翌日の事だった。 「……………なんで!?」  家の中を茶碗が走り回っていた。
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