海の魔物(壱)

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 三人で食事をした後二人が、人食い妖怪について調べたいなんて言い出す。  それに乗り気じゃない真尋に花田がこう付け足した。 「少しあっちの方の海岸に行ってみるだけよ。 本当は夜来てみるのがいいんでしょうけど、危ないことはしたくないもの」  慎重な性格の彼らなので危険なことには首を突っ込まない。  その辺は真尋としてもありがたい。    そして二人の希望で人の少ない海岸の方に向かうと、また栗郷を見付けた。  彼は他にもう二人の男女と話し込んでいるので、こちらから話し掛けづらい。  そっと立ち去ろうかと思ったが、栗郷がこちらに気付いてやって来た。 「また会ったな」  すると栗郷は真尋の肩に手を回した。 「ちょっと高住借りるぜ」 「え?ちょっ……」  栗郷は真尋の肩を抱いて木々が生い茂る場所に連れ込んだ。  端から見ればカツアゲのようにも見える。 「何ですか? ってかその刀持ち歩いて警察捕まりません?」  栗郷の持ち歩く鬼神が作ったとされる妖刀が銃刀法に引っ掛かりそうだと思った。 「ああ、これ人は斬れねぇんだよ。 人に対してはただのおもちゃだ」  どうやらこの刀は妖刀だけあって、妖しか斬れないらしい。  栗郷は刀の刃の部分を自分の手にポンポンと押し当て、人には無害だと証明して見せる。 「まぁそれより、この辺りの海であいつらが噂してた人食い妖怪って奴がいるらしくてな」 「え、マジでいたんですか!?」  まさか二人が噂してた人食い妖怪が本当にいるとは驚きだ。  しかも案外最近の出来事のようで、食い散らかされた人の惨たらしい遺体が浜辺に打ち上げられたそうだ。  警察としては鮫やシャチに襲われたとして処理したらしいが、遺体に妖気が残っており、更にはその後も同様の遺体が見付かったので、海に生息する妖の仕業と今回天明道が調査しに来たと言う。 「だ~からヨウサーの奴らの噂は侮れねぇんだよ」 「??」 「あいつら妖怪好きだから、出没しそうな所に行こうとしやがる。 だから余計な事をしないか見張るために俺もそのサークルに入ったんだがな…… 天明道の奴ら、俺にも仕事バンバン入れやがるし、神社の雑用もコキ使われるしで、顔出せなくなったんだよ」  以前は妖怪サークルにももう少し顔を出していたが、天明道や神社の手伝いで忙しくなりサークルどころでは無くなったらしい。 「ああそれは……… 大変ですね………」  大きく溜め息をつく栗郷に御愁傷様ですと同情すると、ギロリと睨まれる。
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