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「今回の任務、目的の妖は海の中に潜んでるらしく、一緒に来た天明道の奴の魚の式神を使ったら喰われた」
「え?」
「しかも沖の方だ。
水上をボートで行くにしても水中にいる妖とやり合うのは難しい」
海の方を見つめ話していた栗郷がぱっと真尋へ視線を移した。
「………え?」
真尋へ視線を向けた栗郷の数秒の沈黙。
そしておもむろに口を開く。
「空中からなら殺れねぇか?」
「………はい?」
この人は何を言っているのだろう?
真尋は斜め上に目線を上げて首を傾げる。
いや、何と無く分かっているとは思うが、理解したくないと言う心理が邪魔しているのかもしれない。
「だ~から、手伝え」
回りくどい言い方を止めて、簡潔にそう言った。
「いやいやいや、何で俺が手伝わなきゃなんないんですか!?
何のための天明道ですか!?
鳥とかの式神とかを使えばいいでしょ!!
てか狐さんは?」
真尋の訴えは当然だ。
そもそも天明道に所属していない真尋には関係ない話である。
しかし、天明道側も色々と事情があった。
「天明道が先の天狗との戦いでかなりダメージ食らったからな。
人手不足なんだよ。
狐も母親のパシリにされてっし………
それもこれも全部上層部の使えねぇ老害のせいだ」
天狗との争いで天明道本部も襲われ、人的被害がかなりのものだ。
その為海に対応出来るメンバーが現時点でおらず、真尋の手まで借りたいと考えてしまった。
この状況に栗郷は相当お怒りの様子で、眉間の皺が益々濃くなる。
そんな状況を聞かされると断りづらい。
とは言え妖退治なんて命懸けであるので、そんな簡単に引き受けていいものでもない。
栗郷もそれは承知のようでこんな提案をしてくる。
「3割」
「………何が?」
数字だけ言われても何の事か分からない。
「報酬だ。
任務で得られる報酬の3割でどうだ?」
任務での報酬の分け前をやると提案してきた。
真尋にとってもそれは悪い話ではないと言う提案だが………
「3割……
少なくないですか?」
真尋としては自分は関わり無いのに手伝うのだからもっとあってもいいのではと思う。
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