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人を襲う人魚の話しを聞いた利音はふと疑問を抱く。
「その知人って妖が見える人?」
人魚のようなものを見たと言い、尚且つ如月に相談した。
すると如月は頷いた。
「ええ、彼は妖が見える人です。
ですが、祓い屋程の力は持っておりません。
ですから命の危険があるような時はこの寺で匿っています」
今回も匿っていたが、彼も仕事があるので今は不在なのだと言う。
本当は彼がいる時に話しをしたかったが、もしかしたら命の危機が迫っているかもしれないと思い、一刻も早く利音に相談したかった。
話しを聞いた利音はテーブルに乗せた右腕の人差し指でコツコツとテーブルを突いて、何かを考える素振りを見せる。
「人魚ねぇ……
美味しいって聞くよねぇ………」
「利音殿?」
一体何を考えているのか……
緋葉はまた何か良からぬ事を考えているのではと勘繰る。
利音は如月にその人魚について調べてみると言い、場所を聞き出すと寺を後にした。
緋葉は寺から少し離れた所で利音に何を考えているのかと問う。
「いや、もし人魚だとして、それを取っ捕まえて陽炎で売り捌けばそれなりに金にならない?」
「………正気か?」
人魚の肉は美味だと妖の中でも人気の食材と聞いている。
ならばそれを売れば良い値段が付くのではと利音は考えた。
「いいじゃん。
金はいくらあっても足りない。
なら陽炎でも商売すればいい」
経営者となり、金の大切さは身に染みて実感している。
それは実家に居れば決して分からなかった事だし、現在それを経験出来ているのは幸運でもある。
恵まれているとは言えない経営環境だが、好きな事を出来ているので充実した日々である。
それでもやはり真尋と言うバイトを雇ったので、遣り繰りは大変である。
なので人魚を捕まえて陽炎に持っていけばと考えている。
「さて、行こうか緋葉」
「……………」
こうなっては行かないと言う選択肢は無いと、緋葉は腹を括る。
「って言うか目的の海って………」
人魚が目撃された海の場所を先程如月から聞いて、今あることを思い出した。
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