海の魔物(壱)

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「悪かったな」 「え?」  唐突に栗郷が謝罪を口にする。 「菅原さんだ。 お前が嫌な思いをするのは想定してた。 けど、後悔はしてない」  半妖でさえ嫌いな菅原に真尋を会わせたのは申し訳無いとは思う。  しかしはっきり言って、あの二人は信用出来ない。  好き嫌いを相手をロクに見ずに平然と言ってのける菅原に、周りに合わせて自分の考えを主張しない志田。  良い歳した大人の二人なのに人間性に問題がある。  なのでここからは彼らとは別行動し、真尋と一緒に調査しようと考えている。  その方が精神衛生上に良いし、真尋ともゆっくり話せそうだ。  利音が傍にいない分、彼について知りたいこともうっかり口を滑らせてくれそうだと考える。  一方残された花田と三村は、まだ戻ってこないのかと心配していた。 「栗郷先輩、高住君に何の用だろう?」 「………さぁ?」 「なんか栗郷先輩ってちょっと近寄り難いわよね。 少し怖いって言うか……」 「そうかな?」 「そうよ」  花田には栗郷の事は少し怖いと感じているようで、真尋に何か恐ろしい事を吹き込んでいるのではと不安になる。 「高住君優しいから付け込まれないかしら?」 「流石にそれは無いと思うけど……」  花田は真尋を優しいから付け込まれやすいのではと思っているが、三村は違った。  普段のほほんとしているように見えて、結構(したた)かだと思っている。  自分の考えをしっかり持っていて、天然故に人に流されず自分の考えを貫く。  そんな彼が羨ましくも感じる。  花田が真尋を呼びに行こうかと言い出したその時、漸く真尋が栗郷と共に戻ってきた。 「高住君……」 「ごめん二人とも……」  二人に待ってもらってごめんと謝ると、その次の言葉を口にするのに躊躇う。  当然何かあったのかと二人は勘繰り、互いを見て真尋へ顔を向ける。 「どうしたの?」  中々言わない真尋に痺れを切らした三村が訊ねると、代わりに栗郷が答えた。 「お前らには悪いが、こいつ借りてく」  実家の神社関連で、大きな物を運んだりと少々男手が必要で、彼なら意外と力があるので手伝って欲しいと尤もらしい嘘を付く。
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