海の魔物(壱)

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 真尋を借りると言う栗郷に二人はあまり良い顔をしない。  折角一緒に遊びに来たのに、急にそんな事を言われてしまえば当然だろう。  なので真尋が二人へ話す。 「ごめん、ホント…… でも俺栗郷さんを手伝いたいからさ、三村は花田の事送っていってあげて」  一応女性である花田を遅くなる前に家に帰したい。  それにきっと暗くなるにつれ、妖が動く可能性が高くなるので、二人を危険にさらすかもしれないと考えると、この選択はやむを得ない。 「本当にごめん……」 「……いいよ、また今度遊びに行こう」 「三村……」  三村は理解を示してくれた。  花田も、真尋がそれでいいならと納得してくれたので、二人とはここで別れる事にした。 「また連絡するね」 「うん、ありがと」  二人が去った後、栗郷は悪いなと語りかけてきた。 「まぁ関わっちゃったなら仕方無いじゃないですか。 それに人を襲う妖が住み着いてるなら、またここに遊びに来るにも安心出来ないし」 「そうか」  安心してまた三人で遊びに来るためにも仕方無いと真尋は割り切る。   「それでこれからどうするんですか?」  まだ日は暮れていないので遊びに来ている人もまだまだ大勢いる。  真尋が空から調査してみるにしても人の気配が無くなった夜遅くでないと人に見られてしまう。 「取り敢えずさっき一通り探ってみたが、手懸かりがない。 妖気もそれらしいのが見当たらない」  妖がこの辺りにいるのであれば気配を感じる筈だが、それが分からないとなると、妖気を隠しているのか……  そうなれば厄介だ。  妖気を隠せる力があると言うことは、それだけの妖力が必要であることから、中々に強い妖であると予想される。  もしかしたら案外近くで様子を窺っている可能性だってあるので、こちらも慎重に行動する必要がある。 「しゃーねーな。 夜になるまで色々準備しとくか……」  どうせこれ以上何も分からないのならば、妖退治に備えて真尋と打ち合わせでもしておこうと考えた。
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