海の魔物(壱)

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「高住君大丈夫かな?」  真尋と別れ、帰ろうとしていた三村と花田だが、真尋の事が気になっていた。  本当は自分達も手伝った方が良かったのではと。  そうは言っても、あまり体力の無い二人が行ってもかえって足手まといになるかもしれないので、先に帰る方がいいのかもしれないが、やはり真尋を置いて先に帰るのは罪悪感がある。 「まぁでもしょうがないよ。 今度また三人で遊びに行こう」  足を止めていた二人はまた歩き出したその時、三村が女性とぶつかった。 「すみません!!大丈夫ですか?」 「……大丈夫、こちらこそごめんなさい」 「…………」  ぶつかったその女性はとても美しく、思わず見惚れてしまった。  真っ黒な長い髪は腰まであり、少し重そうな二重瞼に、髪の色と同じく色の真っ黒な瞳は引き込まれそうな程魅力的である。  しかし一方で彼女は濡れていた。  艶やかな黒髪からは雫が滴り落ちる。 「あの……」 「失礼しました。 では………」  びしょ濡れの彼女が気になり、声をかけようとしたが、その前に彼女は行ってしまった。  いくら近くに海があるとは言え、タオルで拭いた様子すら無いので不自然だと思った。  けれど思いがけず濡れてしまったなら気の毒だ。  すると花田があっと声を上げた。 「三村君、肩……」 「え……?あっ……」  先程の女性とぶつかったせいで、三村の肩まで濡れていた。  まぁこれくらいなら、この夏の暑さですぐ乾いてしまうだろうが、少し気分は悪い。 「あの人なんか変だったね」 「うん………大丈夫かな? 追い掛けてタオルくらい渡した方がいいかな?」 「そこまでしなくても…… そもそも一人で海に来てびしょ濡れなのも変よ」  わざわざ洋服着て一人で海に入るような事があるだろうか?  友達と一緒ならノリで濡れてしまう事はあるだろうが、見た感じ一人だ。  正直花田はあまり関わらない方がいい気がした。  女の勘と言うものだろうか?  どうも普通の女性に感じなかった。 「そう言うもんかな?」 「そうよ」  女の勘と言うものが存在しない三村に花田が指摘した。  
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