海の魔物(壱)

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「なぁお前、なんで宗像んとこで住みながらバイトしてんだ?」  利音がいない今なら真尋の秘密を色々と聞き出せるのではと栗郷はここぞとばかりに質問をする。 「なんで……まぁ、たまたま店行って俺の不注意で品物壊しちゃって、それで利音さんがウチで働けばチャラにしてやるって……」 「……じゃあなんでそこに住んでんだ? わざわざ一緒に暮らす必要は無くね?」 「え~そんな事聞かれても俺は分かりませんよ。 利音さんの気まぐれとしか………」  そう、真尋の普通の混血とは異なる微妙な気配を感じた類稀なる才能を持つ利音が、好奇心と言う名の気まぐれで住むところを提供してくれたが、その彼の心理と言うものは未だに理解出来ない事がある。  なので彼の考えていることを教えろと言われても返答に困るのだ。  ならばと栗郷は質問を彼自身に直接関わる物へと変える。 「じゃあお前、半妖か?」 「………はい?」  半妖かと言う質問に真尋はすぐ答えられなかった。  何故なら利音から言うなと口酸っぱく言われていたから。  なのでこの手の質問は困る。  真尋が何かを考えて答えないでいると栗郷は言葉を畳み掛ける。 「お前、以前より人の気配より妖の気配の方が強まってんの気のせいか?」 「…………?」  半妖よりも妖に寄って来ていると栗郷は感じた。  彼も利音程で無いにしろ、優秀な祓い屋であるので、真尋の変化に気付き始めた。 「お前、本当は何なんだ?」  ただの天狗の混血のように思えない。  彼の正体を知りたい。 「すみません、利音さんから口止めされてるので」 「何故?」 「………それは」  意外と引き下がらない彼にどうしたものかと悩む。  いっそ言ってしまったらどうだろうか?  いや、それで変なことに巻き込まれでもしたら後悔する。  どうあっても口を割らないなと悟った栗郷は攻め方を変える。 「ま、言えねぇのは分かった。 それは俺が信用ならねぇって事だからだろ?」 「え?えっと………」 「なら信用されるようにすりゃ喋るか?」  そこまで言われて話せませんとは言えない。 「………天明道に知られると色々マズいらしいので」  そう言うのが精一杯だった。 「なる程な……… そりゃ厄介そうだ」  栗郷は納得したようにこれ以上聞いてくるとこはなかった。
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