海の魔物(弐)

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 栗郷の視線の先には利音の姿がある。  宗像と言う呟きに反応した真尋が栗郷の視線を追うと本当に利音がいて驚くと共に、更に隣には人の姿の緋葉もいる。 「え、なんで!?」  予想外と言うように驚く真尋は慌てて彼に駆け寄る。  彼らが来るなんて寝耳に水だ。 「利音さん、緋葉!! なんでここに?」 「真尋……… やっぱここの海にいたんだ」  真尋が海に遊びに行く事は知っていたが、何処の海とまでははっきりとは覚えていなかった。  しかし、近場の海はここしか無かったのでやっぱりいたと言う感想だ。  真尋の事は予想出来ていたが、予想外なのは栗郷だ。  彼の姿を見てぎょっと目を見開いてしまう。 「なんで君がいるの?」 「そりゃこっちのセリフだ。 高住は知らなかったんだろ?」 「はい。もしかして利音さんも本当は海で遊びたかったんですか? だとしたら誘わなかったの申し訳無かったですね」 「いや違うし!!」  真尋には寂しかったから着いてきたと思われた。 「じゃあなんで?」 「人魚の捕獲」 「は?」  何を言っているのか分からない二人は互いを見合う。  すると利音は如月から聞いた事を二人に話し、更にその人魚を売り捌こうと画策している事をぶっちゃけた。 「それって………」  人魚の話しを聞いた真尋は、それが栗郷が受けた任務の事ではないかと彼を見る。 「目撃者がいるってことか……… 早いとこ片付けねぇとまた被害者が出る。 ………てかアンタは人魚を何処で売り捌く気だよ?」 「…………ナイショ」  何か隠している利音だが、彼が口を割る筈がないので、これ以上聞くのは無駄だと思った。  それにもう一つ気になるのは……… 「んで、そっちの妖は誰だ?」  栗郷は人間の姿の緋葉を見る。  見たところ人の姿を取ることが出来る事と、彼の妖気からそれなりに力のある妖だと感じた。  一方の緋葉も栗郷を誰だと言うような目で見ているので利音が答えた。 「緋葉。真尋が怪我したただのカラスと思って拾ってきたら烏天狗だった奴。 生真面目で真尋より使えるからウチに置いてる」  真尋より使えると言われた本人はそんな事無いと目で訴えるが、無視される。
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