320人が本棚に入れています
本棚に追加
/387ページ
「で、天明道の栗郷蓮」
今度は緋葉に栗郷を紹介すると、緋葉は少し緊張したように顔が強張った。
そんな緋葉の心情を察した真尋は彼を安心させようと言葉を付け足す。
「大丈夫、栗郷さん意外と優しいし」
そう紹介された栗郷意外とは余計だと言うような目で真尋を睨む。
栗郷としては特に害が無いのならどうでもいい。
妖を式として使う術者もいるので、そう言った類いだと思うことにする。
「で、君は何?君も人魚狩り?」
利音が嫌そうな顔をして栗郷に聞く。
栗郷がいると言うことはおそらく目的は同じ妖だろう。
そうなれば人魚の身柄はこちらに引き取れるだろうかと、それが不安だ。
折角いい金儲けになると思ったが、中々に大変そうだ。
「て言うか君、友達と来てたんじゃないの?」
確か真尋は大学の友達と海に行くと言っていたが、他に人は見当たらない。
すると真尋が栗郷に目を向けて、事情を説明していいかと言うような顔をするので、栗郷の口から説明した。
「じゃあ何?他に人いんの?」
他に人がいるのかとは、天明道の人が他にも来ているのかと言うことだ。
しかも栗郷とあまり関係が良くないようだし、そうなればその天明道の二人は栗郷より早く人魚を狩りたいと考えている筈。
ならば余計に人魚の肉を手に入れるのは困難である。
もう面倒くさいので来るんじゃなかったと利音は後悔した。
放って置いても今回の事件は天明道が何とかするだろう。
その結果を如月に報告すれば、人を襲う人魚を目撃したと言う男性も安心するだろうから、金が手に入らないかもしれないなら帰ろうかなと利音が考えていると、栗郷は彼が来たのはこれ幸いと、ニッと何か企むように笑みを浮かべる。
「よく分かんねぇけど、アンタは人魚が欲しいわけだ。
じゃあ俺と組め。人魚はアンタにくれてやるから」
「……………」
栗郷としては彼がこちらに来てくれるなら僥倖とも言えるが、天明道に関わり無くない利音は複雑である。
正直リスクの方が大きいと、帰りたいが帰してくれなさそうだし、獲物はくれると言うので何も言えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!