不思議な骨董屋

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 商品を並べ終え、店を開け客を待つ事一時間、まだ一人の客も来ない。  更に一時間経って漸く一人やって来たかと思っても、暫く見て何も買わずに出ていってしまった。  正直この店は儲からない。  客も少ないし、一つ一つ単価は高いが買う人は中々いないので暇は多い。  ぶっちゃけここでバイトしているのを後悔しそうだ。  何故こんな所で働く事となってしまったのか、それは……  それは真尋がまだ高校生の時だった。  大学進学が決まり住むところはどの辺がいいのか見て周っていたところ、たまたま見かけたこの骨董屋の掛け軸が少しだけ気になった。  その掛け軸には天狗の絵が描かれているのだが、その天狗の目がこちらを追っているような気がして、確かめる為に店に入った。  まぁ気のせいだったようで、色んな角度から見てもおかしな所は何もなかった。 「ま、いっか……」  きっと疲れて幻覚を見たのだと引き返そうとしたその瞬間、近くにあった壺が手に当たって落ちてパリンと音を立て割れてしまったのだ。  壺を割ってしまった真尋はどうしていいか分からずひたすら店主に平謝りした。  弁償しますと値段を聞くと100万円だと言うではないか。  そんな大金高校生の真尋が持っているわけもなく、家の人に正直に言って肩代わりしてもらい少しずつ返していこうと考えた。  そんな中で店主からこんな提案をされた。 「うちで働いてくれればチャラにしてやる」  そんな事を言うので詳しく聞かせてもらうと、住むところを探しているのならここに住めばいいとまで言われた。  どう言う真意で言っているのか理解出来ないが、100万円と言う金額がチャラになると考えたら首を縦に振るしかなかった。  そんな経緯から壺を割ってしまったと言う罪悪感と、大学から近い場所に澄めるのは真尋にとって都合が良かったので文句も言えない。
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