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その後雲外鏡盗難の男は天明道をクビになり、闇オークションも廃止に追い込まれて、主催者や関係者も天明道から罰を受けたと言う。
その罰と言うのは、誰も知らない。
だがしかし、また別の人物によってその裏でこっそり次の闇オークションを開催する準備がされていると言う噂がある。
結局の所、イタチごっこである。
そして利音は天明道本部との交渉の結果、雲外鏡を手に入れた。
その代わり、こうした曰く付きの呪物などの処分を行う仕事を手伝わされることとなった。
まぁ利音にしてみれば願ったり叶ったりの仕事ではあるが、結局天明道との関わり、しかも本部との関わりは避けられなくなった。
「で、これが雲外鏡………」
宗像骨董店の居間では雲外鏡を利音と真尋、緋葉が囲んでいた。
楕円形の鏡で、その周りに細かい装飾が施されている一見ちょこっと高そうな鏡。
姿見鏡程ではないが中々の大きさなので何処に置くつもりだろうと、真尋はそっちの心配をする。
「ねぇ緋葉、一旦人の姿になってみてよ」
そう利音がお願いをする。
映した者の正体を暴くと言われる雲外鏡。
ならば人の姿になった緋葉を一体どんな風に映し出すのか見てみたかった。
利音に言われ緋葉は人へと姿を変えた。
強面の青年のその姿で雲外鏡の前に立つと、目の前に現れたのは本来の姿の緋葉だった。
「お〜なる程。こう言うこと………」
雲外鏡にあまり興味が無かった真尋も興味深そうに見つめていた。
すると今度は横から覗いている真尋に変化があった。
翼を生やしていないのに雲外鏡に映る真尋の背に翼が現れる。
そして次の瞬間真尋の容姿が別の男性に変化した。
「え、誰………?」
白に近い紫の長い髪にキリリとした端正な顔立ちの男性で、見たことのない人物だ。
しかしながらまたすぐに元の真尋の姿に戻り、翼も消えた。
一瞬だけ映った知らない男に真尋は雲外鏡に映る自分から目が反らせなかった。
そしてその横で動揺した緋葉がいた。
「貴眞…様……?」
思わず呟いた緋葉の一言に真尋と利音は緋葉に目を向けた。
「誰それ?」
「………あっ、それは」
無意識に口にしてしまったので緋葉はしまったと思わず口元を腕で覆った。
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